「新宿にある私の家からは、交通整理のおばさんと、登校する小学生、名前の知らないコンビニエンスストアーが見える。そんなありふれた風景を前に、イラクの爆発映像、昨日見たTVのコマーシャルで見たアイドルの笑顔、インターネットの掲示板での会話・・・そんなものがちらつく。デジタル化された妄想が膨らむとき、現実は剥がれてゆく。老いていく婆ちゃんの人生より四角い画面の中で語られる誘惑の方が、強烈で鮮度が高く、キモチガイイ。
文明社会の中で心と体は壊れてゆく。味覚障害、拒食症、鬱病、ネット心中・・。誰もが何らかの病を抱えている。文明が巨大な軍事力と結びつき、大量殺戮とともに大きな物語を作っていくとき、私達の人生などはその物語を構成する歯車に過ぎない。大量破壊兵器とは心を失う人間社会ではないか。
私達が信じている四角い箱は何かあったとき助けてくれない。それは、毎月基本料金を請求するだけでなく、常に更新を余儀なくし、様々なオプションの追加料金を請求する。コンピューターウイルスに喰われればただの箱になり、しかも固くてくえたもんじゃねえ。
四角い箱の中で繰り広げられる永遠に死の無い物語。来るべき世界が其処に向かっていくなら、私はそんな未来などぶっ壊す。私は今、隣に居る人の肌のぬくもりと臭いを描こう。死と愛を描こう。剥離される恐怖を描こう。つまらない血痕を残そう。ふざけんじゃねえ。あたしたちは今、ここに生きている。増山麗奈(府中ビエンナーレ図録より)」


